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zoom RSS 特別? 番外? ジョン・キーツ【つれなき美女】

<<   作成日時 : 2007/10/09 21:50   >>

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 昨日の予告どおり(?)、英国ロマン派詩人のひとりであるジョン・キーツの、感覚的に美しい、【つれなき美女】を。

 さらに下に、英語版を付しておきますので、興味のある方はぜひ、英語の美しさも味わってみてください。
 (とはいえ、りらりも対訳なしでは理解するのが難しいのですけれど・・(涙))
           ウォーターハウス<<la belle dame sans merci>>(以下同タイトル)
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 つれなき美女
            ジョン・キーツ 
(1819年)



 「どうしたのだ、見事な鎧に身を固めた騎士よ、
  かくも独り寂しく蒼ざめてさまよっているのは?
 湖の菅(すげ)の葉は枯れ果て、
   もう鳥も鳴かなくなったというのに!


 どうしたのだ、見事な鎧に身を固めた騎士よ、
   そんなに憔悴し、悲しみに打ち拉がれているのは?
 栗鼠(りす)の穀倉には蓄えが満ち溢れ、
   収穫のときももう終わってしまったというのに!

 ゆりのように青白な君の顔は、
   苦悩と熱病のような汗で、じっとりと濡れている。
 薔薇色に輝いていたと思われる君の頬も、
   今は色褪せ、見る影もないではないか」


 「私は緑の草地で一人の美女に出会った、
   その美しさは比類なく、そうだ、まさに妖精の娘といえた。
 その髪は長く垂れ、その足は軽やかで、
    その目は妖しげな光を湛(たた)えていた。


 私は花輪を編んで彼女の頭を飾ってやり、
    馥郁(ふくいく)たる花の腕輪も腰帯も作ってやった。
 彼女は、私を恋しているかのように、
    私の眼をじっと見つめ、呻き声をあげた。

 
 私は彼女を馬に乗せて静かに駈けたが、
    終日私の眼には何も入らなかった、―
 彼女が横ざまに腰をおろし、
    絶えず妖精の歌を口ずさんでいたからだ。


 彼女は甘い草の根や
    野生の蜜や甘露を探してくれ、
 異様な言葉で私に囁いた、
    『私は貴方を愛しています―心から』と。


  彼女は私を魔法の洞窟に連れてゆき、
    涙を流してはため息をついた。
 その怪しい光を湛えた眼を、
    閉ざしてやった、―四度、接吻を繰り返しながら。


 やがて彼女は私を眠らせてくれた、
    私は夢を見た。―だが、なんと悲しいことか、
 それがこの冷たい丘の中腹で見た
    最後の夢になってしまったのだ。


 夢の中には青白い王侯や武者たちが現れた、
    いずれも死人のように蒼ざめていた、
 そして、叫んでいた、―『あのつれない美女が
    お前をとりこにしてしまったのだぞ!』と。


 暗がりの中に、死の形相もすさまじい彼らの唇が浮かび、
    大きく口を開いて凄惨な警告jの叫びを上げていた。
 私は眠りから覚め、気がつくと、
    この冷たい陸の中腹にいるのが分かったのだ。


 私がこのあたりから去ろうとせず、
    一人寂しく蒼ざめてさ迷っているのはそのためなのだ、
 湖の菅の葉は枯れ果て、
    もう鳥も鳴かなくなってはいるのだが」


  (平井正穂編 『イギリス名詩選』
    岩波文庫 2004年第31刷 より抜粋)

                サー・フランク・ディクシー(1853-1928)
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 怪しく、どこかわからない曖昧模糊とした世界の中で、「はっ」とさせられるほど、具体的に描写される騎士と美女の愛の場面。
 この世界がどこかということや、美女が「なぜ」涙を流すのかは一切説明がないが、しかし、そこには確かに彼らの愛が存在した。

 あいまいな世界の中の一瞬のvividなシーン。これこそが人々をひきつけている理由なのだろう。

 以下にオリジナルを載せておきます。色が変わっている部分だけでも味わっていただけたら幸いです。

           フランク・クーパー(1877-1958)
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Oh what can ail thee, knight-at-arms,
Alone and palely loitering?
The sedge has withered from the lake,
And no birds sing.

Oh what can ail thee, knight-at-arms,
So haggard and so woe-begone?
The squirrel's granary is full,
And the harvest's done.

I see a lily on thy brow,
With anguish moist and fever-dew,
And on thy cheeks a fading rose
Fast withereth too.

I met a lady in the meads,
Full beautiful - a faery's child,
Her hair was long, her foot was light,
And her eyes were wild.


I made a garland for her head,
And bracelets too, and fragrant zone;
She looked at me as she did love,
And made sweet moan
.

I set her on my pacing steed,
And nothing else saw all day long,
For sidelong would she bend, and sing
A faery's song.

She found me roots of relish sweet,
And honey wild, and manna-dew,
And sure in language strange she said -
'I love thee true'.

She took me to her elfin grot,
And there she wept and sighed full sore,
And there I shut her wild wild eyes
With kisses four
.

And there she lulled me asleep
And there I dreamed - Ah! woe betide! -
The latest dream I ever dreamt
On the cold hill side.

I saw pale kings and princes too,
Pale warriors, death-pale were they all;
They cried - 'La Belle Dame sans Merci
Hath thee in thrall!
'

I saw their starved lips in the gloam,
With horrid warning gaped wide,
And I awoke and found me here,
On the cold hill's side.

And this is why I sojourn here
Alone and palely loitering,
Though the sedge is withered from the lake,
And no birds sing.

     アーサー・ヒューズ(1823-1904)
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 おまけとして、これは出版前の1819年のバージョンなのだけれど、改定され出版された20年のバージョンと見比べてみると、騎士と美女の心理状態に若干の変化があって、
 たとえば、涙に濡れる彼女の眼にくちづけをする騎士を描いた場面は、
 
  And there I shut her wild wild eyes
With kisses four
   ↓
And there I shut her wild sad eyes--
So kiss'd to sleep.

 となり、りらりはここに(つれない美女といわれても、騎士に本当に恋をしてしまった)女の脆さ、そして、騎士の意思をもった優しさを感じたのだけれど、いかがでせうか(笑)?


 いずれにしろ、なかなか(19世紀頭にかかれたのに)世紀末的で、よいではありませぬか。。。


 (さすが「英文学」なだけあって、この詩からインスピレーションを得た作品は、文学の主題を好んだラファエル前派(と、いわゆる後期ラファエル前派、あるいは継承者たちの絵画がほとんどです^^)







 

 

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
はっきり言って、美女は騎士に恋なんかしていなかったし、涙というのもそれが男性の心をさらに惹きつけるとわかっている上で流したのだと思います。
このつれなき美女というのは実在する現実のつれない女性のことではなく、魔性の女のことなんです。
language strangeとは魔性の女は話すことができないので、こう書かれているそうです。
私はこれは愛の詩ではなく、美しいけど幸せな夢から覚めた後のような、どこか悲しい詩だと感じました。

柿食う客
2009/11/16 14:23

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