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zoom RSS J.A. ホイッスラー 【黒と金色のノクターン 落下する花火】 1875年

<<   作成日時 : 2007/10/05 11:18   >>

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ジェームズ・マクニール・ホイッスラー
 James Abbott McNeill Whistler
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<<黒と金のノクターン
    ― 落下する花火>>


Nocturne in Black and Gold
: The Falling Rocket

     1875年
60.3×46.6cm 油彩・画布
   デトロイト美術研究所



  「この作品で、私は一切の外的な関心を排除し、芸術的関心のみを示した。
  それは線と形状、そして色彩の配置によるものであり、調和性に優れた結果をもたらすのであれば、それらから発生する如何なる偶然でも、私は利用する。」



 これは芸術の唯美主義が頂点を極めた世紀末にホイッスラーがこの絵に関して述べた言葉。

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 まるで現代の抽象画を予感させるかのようなこの絵は当然、イギリスのグローヴナー・ギャラリーで発表するやいなや論争の的となり、当代一の批評家ラスキンと裁判沙汰にまで発展したほど。

 ラスキンはこの絵を「公衆の顔めがけて絵の具つぼの中身をぶちまけただけ」の絵だと酷評。
 それに腹を立てたホイッスラーは翌年、彼を名誉毀損で訴えた。

 ホイッスラーは作品を「芸術的アレンジメント」された夜景を描いたものであると主張。
 一方の原告側は「失敗作」という主張を譲らない。

結局、ホイッスラーの勝利となるこの裁判だったが、ホイッスラーが得た賠償金はわずか1ファージング(4分の1ペニー)。裁判費用の足しにもならなかったために、この画家は(できたばかりの)自宅を売却する羽目になった、という逸話つきのこの作品。

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 ハーモニー、ノクターン、そしてアレンジメント。

 ホイッスラーの作品にはしばしば音楽の用語が多用される。
 これは、画家が意図的に、主題(つまり、絵の中に「何が」かかれているか、「どんなお話が隠れているか」ということ)を排除し、形式(「どのように」描くか、つまり、どこにどんな色をおいたり、構図にすることで美しく見せようか、と考え、表現すること。技法とも言い換えられる)を重視していることに他ならない。
 
 内容が形式と完全に分割され、ただ「美しい」と思う状態を目指す。

 それが、世紀末の唯美主義。そして、このような見方はのちに印象派、あるいは現代抽象画へと受け継がれる。

 あるいは美しいものを形式化し、より美しく再構成する、という面では、日本画が古来からしてきた描き方ともいえるかもしれない。



 
 破裂音とともに華やかに「ドンッ」と咲く花火。

 その一瞬の後、静かに、ぱらぱらと、余韻を残し落ちてゆく音と光。

 この絵とタイトルを見たあと、「そういわれると、花火の余韻はピアノのノクターン演奏の中のぱらぱらと落ちていく音のイメージに似ているな」と気づかされ、あたらしい見方を教えられる。

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 曲線を描く金色の「もや」のような部分も情緒的な旋律を奏でている。

 日本趣味でもあったホイッスラーの絵には(日本独特の見方、感じ方である)「情緒」と呼ぶにふさわしい作品をいくつも残した。

 この作品も、黒と金という強い色彩のコントラストがあるにもかかわらず、余韻と大気、やわらかさ、そして情緒というものが感じられて、ホイッスラーの中でも好きな作品のひとつ。


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 手前には影のような、人物のような不思議な影と、もうひとつ、右側に着物をきた女性のような、そうでないような不思議なカタチが見られる。

 それは見るヒトのイメージに委ねられる。
 答えを見つける必要はない。

 ただ、色彩とカタチのおりなすこの二次元の世界の中で織り成される、静かで美しい旋律に聞き入りながら、見る人は、そのひとの想像力のなかに流れて、広がってゆく時間と感覚的な美しさに身を預けて酔うことができればそれでいい。


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 そんなふうに、静かに、何も考えずに美しいものに身を任せたい時に思い出すのがこの作品だ。










    【関連記事】
 ホイッスラー
 http://rirari-exhibition.at.webry.info/200708/article_36.html 


 

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