りらりの展示室

アクセスカウンタ

zoom RSS 【絵画鑑賞】ボッティチェルリの<ヴィーナスの誕生>

<<   作成日時 : 2007/09/11 13:49   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 2

              
         サンドロ・ボッティチェルリ(1444年ごろ〜1510)

         <<ヴィーナスの誕生>> Nascita di Venere
              
                
画像

1486年ごろ 175×278cm
       ウフィツィ美術館、フィレンツェ カンヴァス・テンペラ

        




 本作は<<春>>(プリマヴェーラ)と並ぶ、ボッティチェルリの代表作である。

画像
 メディチ家の1人、ロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスカ・ディ・メディチ(1463-1503)の子孫の邸宅から発見されたものの、委嘱に関する記録が残っていないため、作品の依頼者は分っていない。

 <<春>>と同様に古典神話を源泉にしているが、古代ギリシャの詩人ヘシオドス(紀元前8世紀)が表現したような「ヴィーナスの誕生」の部分―ヴィーナスは、天空の神ウラノスの局部が、息子クロノスの大鎌によって切り落とされて海に投げ込まれ、その周りに湧いた泡から誕生したという― ではなく、生まれたばかりの美しく純粋無垢なヴィーナスが貝殻に乗って陸地に向かっている穏やかで優美な情景が描かれている。


画像
 画面左には、西風ゼフュロスと、妻である春の女神フローラがしっかりと抱き合いながら飛来し、彼らの息吹によって帆立貝に乗ったヴィーナスは陸地へと運ばれる。

 バラは、ヴィーナスが誕生したときにはじめて咲いたといわれる花。ゆえにゼフュロスフローラのまわりをふわりと舞う花が「ばら色」をしていると考えられている。

 
画像

 画面右に、美しい深紅のマントを広げて、ヴィーナスを包もうとしているのは時と季節の女神ホーラ
 彼女はかかとを軽く挙げており、優雅で軽快なダンスをしているかのようだ。

 ホーラのまとう衣装に描かれている花々はどれも春に咲くもので、「春の女神」としてのホーラを強調している。


 
画像

 金色を施されたホタテ貝の中央に立つヴィーナスほど「優美」という言葉にふさわしいものはないだろう。
 やや引き伸ばされたプロポーションに加え、黒く鋭い輪郭線によってシャープで彫刻的な印象を与える愛と美の女神は、ボッティチェルリ特有のメランコリックな表情を浮かべている。

 「人間」的というよりは、理想的な美を追求しているこのヴィーナスはしばしば<<春>>に描かれるヴィーナスと対比され、当時の新プラトン主義の思想との関連性から<<春>>のヴィーナスを「地上のヴィーナス」と呼ぶのに対して、本作のヴィーナスは「天上のヴィーナス」と呼ばれている。

 人物たちには随所に線の遊びがみられ、画面全体からかんじられる柔らかな春の風が心地よい。




 画像

この作品は、<<春>>と同じく顔料を卵黄で溶くテンペラ画法で描かれているが、板に描かれた<<春>>とは異なりカンヴァスに描かれている。
 イタリアでは1500年代になり(特にヴェネツィアで)好まれるようになったカンヴァスは当時としては珍しかったようだ。

 (ちなみに、カンバスは主に邸宅の装飾するときに好まれ、その理由は、板よりも安くて、持ち運び(運送)しやすかったからである。)


【関連記事】

ボッティチェルリの<<春>>
http://rirari-exhibition.at.webry.info/200709/article_6.html

新プラトン主義の(砕いた)説明
http://rirari.at.webry.info/200709/article_8.html

新プラトン主義を受けたとされる作品
 →ティツィアーノの<<聖愛と俗愛>>
http://rirari-exhibition.at.webry.info/200708/article_17.html

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
そう、そう!デザイン性!この絵は曲線のデザイン(あるいはコンポジション:配置の仕方)が本当に美しいですよね。
 また、このヴィーナスの肢体のくねらせ方も、恥じらいをみせつつも、美しさを誇っているかのよう・・・。
 本当に「優美」という言葉がぴったり来る作品です。
りらり
2007/09/13 22:34
私の説では、この「ヴィーナス誕生」は、ロレンツォ・イル・マニフィコが長男のピエロの結婚式(1488年)に祝賀品として贈ったものと考えています。

西風ゼフィーロと花の女神フローラの夫婦は、ピエロとオルシーニ家から娶る新妻を表しています。オルシーニ家はこのときまでに、ローマ教皇を二人も輩出している大貴族で、将来の教皇輩出のためであります。

絵の中央のキュプロス島に上陸しようとしているヴィーナスはイル・マニフィコの次男のジョヴァンニですね。西風ゼフィーロ夫妻が息を吹きかけて上陸の手助けをしていますね。愛と美の女神ヴィーナスは、この地上にヴィーナスの治国を実現するために上陸しようとしているのです。そして陸で衣を着せようと待ち構えている時の女神ホーラは、イル・マニフィコ自身です。ホーラが着せようとしている衣を反転複写し、もとの衣と合わせると、法王冠と法衣が現われますよ(笑)。時(時代)は俺が作るのだ、という意味でしょう。

親父のイル・マニフィコと長男ピエロ、そして次男ジョヴァンニが勢ぞろいしてやろうとしていることは、次男ジョヴァンニをローマ教皇にすると同時に、メディチ家の治国を永遠にすることです。

「春」と「ヴィーナス誕生」は、この二つのメディチの野望と悲願を実現するための、金星の女神ヴィーナスにその願いを託す護符なのです。

 護符であるならば、呪文はどういう文句でどこに書かれているかというと、それについては長くなりますので、拙著「隠された歌は真実を告げる」第3巻(http://tanto.wook.jp/)
をご参照ください。
長文、失礼いたしました。
tanto
2011/09/19 02:24

コメントする help

ニックネーム
本 文
【絵画鑑賞】ボッティチェルリの<ヴィーナスの誕生> りらりの展示室/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる